競人、この言葉分かりますか?

これは、私が責任者として働いていた時に、私に年齢を偽って採用された葦(イ)さんから聞いた話です。

彼女は明るく、機転が利く頭の良い女性でした。

私は面接で履歴書を見て18歳だったので採用したのですが、何年か後になって、16歳で採用したことが分かりました。日本語に加え英語や韓国語も勉強していましたが、語学習得のコツを得ている様で、読み書きは出来ないものの、会話はそこそこ出来るレベルの女性でした。

日本で言うと、ローラみたいな顔つきとしゃべり方が特徴的で、良く喋る可愛い女性でした。

彼女が学校(小学校か中学校か不明)を卒業し、親の経済的な負担を少なくするため、親の知り合いの紹介で、スポーツの振興の団体に入ったという事です。

団体のお金は、スポーツ振興のため、省や市からも補助金が出ていたそうです。(注:中国は、市が県より大きく桂林市は幾つかの県から成り立っています。広西省は、更に市より大きな範囲を示し、広さから言うと日本の国土の60%強になります。)

親方の指示の下、彼女は他の仲間と共に、周辺の田舎や街を廻る、いわゆるドサ廻りをやって来たそうです。地方は特別な娯楽施設も少なく、彼女たちの巡業は、大いに歓迎されたとのことです。

巡業地となる土地では、彼女を含む多くの人が学校等の運動場を借りて、出場者全てが背番号を付けて競争します。

出場者は彼女と同僚、それから巡業地の出身者で足が速い女性達で、一方彼女の親方は巡業先の親方達と賭け金の調整や配当金の処理で多忙な時間となります。

500mか800mか分かりませんが、一定の短距離を彼女らが走り、順位を競います。(ただ100m程度の短距離だと時計の計測もないだろうし、順位が判別しにくい可能性もあるため、順位に差が出るある程度の距離を走らせたのではと、思います。)

その順位を基に、賭けた配当金が支払われる仕組みで、やっていることは、日本の競馬や競輪と全く同じです。ただ日本の競輪や競馬だと競技場の整備費にもお金がかかるし、馬の維持費もお金が掛かります。

競人ならば、お金もかからなく何処でも行えるため、手軽な競技かも知れません。更に周りには代わりの馬も沢山います。スポーツ振興や桂林市からオリンピック選手を生むという大義名分で、役所から補助金もせしめることも出来ます。

彼女らは競技の開催日とは無関係に、常日頃から馬と同様に走る練習を親方から強いられるそうです。

そして、彼女の様に早く走る女性には、『今日の競技では、絶対1番になるな。』とか細かい指示が親方から出されるそうです。                          地元の親方からも地元出身の選手に、お前は最終コースで抜け出して1番になれとかの指示がある様です。                                    ですから、殆ど親方同士で、何番と何番が1番2番になると決めており、胴元の方に賭け金が転がり込む仕組みが出来上がっていたそうです。

何も知らない村人たちは、出来レースと知らないで、夢中になりお金を賭けるのです。

ただ彼女達も20歳近くにもなると、競馬の馬の役割以外にいろんな情報を入手し親方との関係も微妙になることが想像されるため、彼女たちは17歳か18歳位までが競人としての限界かも知れません。

彼女たちは、特別に親方の指示が無いと、馬と同じく皆必死で走ります。時には市長杯(?)の様に、純粋に競争だけで稼げるレースもあるのでしょう。何時も順位が悪いと日銭が稼げないので、お金の為一生懸命走ると彼女は言います。

私が想うに、親方が彼女らに支払うのは、食事代と宿泊代と競技参加の参加費程度かも知れません。ある時、10Km程度のマラソン大会があり、この時は1番になると3000元、2番だと2000元が、5~6番目迄纏まったお金が貰えるとのことで、彼女は死ぬ気で走り1番の賞金を獲得したと言いました。

私の会社で働きたいと思ったのは、流石にこうして毎日、毎日練習で走ることに疲れたからと、後から話してくれました。

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