【精進料理店】2.契約締結から工事準備

20161028103

リョウさんの仲介で、お寺の経営者と2階の董事長(社長)室で、契約を締結することとなりました。敷金5万元(75万円)、月賃料6000元(9万円) 契約期間5年間と言う骨子で契約を締結しました。電気代と水道料は後日調整。警備費用も後日調整ということになりました。

次にリョウさんと建物の改造工事、即ち完成後のレイアウトの打合せに入りました。

100坪の広さがありますが、1フロアーで70~80人もの客を迎えるとなると、男女別のトイレの新設、調理室、配膳コーナー、食器置場、洗い物の場所確保、食材置場などもそれなりの面積が必要となり、最終的には面積不足もあり、北側の山の岩肌まで2m位の余裕がありましたが、これをぎりぎりまで屋根を伸ばし、洗い物の場所を確保しました。

ですから、最終的には100坪ではなく120坪前後になったと思います。(保健所の許可を取るために、建物工事が終了後、敷地内にある浄化槽の1枡増設と既存浄化槽の拡張工事も、行いました。)

それから30坪と70坪に区切られていた壁は撤去しました。100坪の面積なので、フロアーのあちこちに柱がありますが、これも考慮の上、レイアウトを考えました。

天井までの高さは3メートルを優に超える高さで、ゆったりした感じはありますが、さらに昼間青い空を見せて室内を明るくするためと、夜間星が見える様にするため、直打ちしたコンクリの天井を2ヵ所(1か所2m×2m程度)ほどぶち抜き、彩光のためW字を逆さまにした鉄枠にガラスを入れました。

しかし鉄枠と斫(はつ)った天井のコンクリートとの間には目視では見えにくい隙間があったのか、雨天の日には、雨漏りが続けて2、3回発生しましたので、漆喰などで雨漏りを防ぎました。

工事の概要は以上ですが、日本と中国の建設工事の違いなど、これから順を追い説明いたします。

日本では、オーナーが建設会社や工務店を選び全て任せる形ですが、私がいた桂林では全く違いました。私とリョウさんの2人が建設会社や工務店そのものです。まずリョウさんの案内で、職人を探しに出かけました。

場所の名前は忘れましたが、いろんな職人が、段ボールの切れ端に職業を明記し大きな道路際に座って、待機していました。左官、配管工、電気工、塗装工などいろいろいます。

仕事の能力を判断し、雇うかどうかこちらが決める訳です。               出来もしないのに、大風呂敷を広げる人が多く、何処のビル工事は俺がやったのだとアピールします。                                      ただこちらも仕事の能力の判断基準も無いため、工員と話し、人柄を予想する程度しか方法がありません。

仕事に採用するかどうかのもう一つの判断は、日給を幾らにするかということになり、交渉が始まります。

そして、お互いが納得したら、口約束の契約となります。大半が一人で済むという訳ではないため、左官でも数人を雇う必要がある訳ですが、私たちも同じ仕事の人を何人も面接する訳にはいかないため、口約束した人が選んだ仲間を連れてきてもらう訳です。(恐らくその人は、 仲間から口利き料を取っているはずです。)

少し話が逸れますが、大都市でのマンションやビル建設も似ている様です。ただ大都市では、規模も大きく専業化も進んでおり、依頼者(オーナー)が建設会社に建物建設を依頼します。

建設会社の社長は、田舎から出て来た農民を雇い建設現場で仕事をさせますが、給料の支払いが滞ることが多く社会問題となっています。オーナーは金を支払うのに、自分の利益を増やそうとして、建設会社の社長自身が給料を出し渋るのです。

工事の最初の頃は給料の遅配は無いようですが、完成が近づくと遅配が多くなり、給料が出なくなるため我慢できなくて辞めて行くように仕向ける訳です。(この様な方法は、建設に限らず、多くの業種で普通に行われています。私の知人も、薬品開発のための実験用動物を飼育する会社に勤務し、業績が良くなかったことも有り、6ヶ月給料が遅配したそうです。我慢出来ずに、途中で多くの人が給料を受取れず辞めて行ったそうです。)

ですから農民工とのトラブルは日常茶飯事で、中にはヤクザを雇い農民工を殴り倒し、給料支払いを拒否するケースもあります。この程度では、警察も動きません。建物竣工後、建設会社の社長と農民工が、何回か未払い給料支払いの事でもめた後で、何月何日に給料を渡すから、代表が受け取りに来いと言いました。

それで代表が事務所に出向き、社長に『給料をもらいに来た。』と言うと、社長は『分かった。金を渡すからテーブルの上に両手を出しなさい。』と言い、手を置かせました。すると、直ぐに隠し持っていた斧で、両手を切断したと言う事件がありました。ですから工員にとっては、日当の額もそうですが、給料を真面目に払ってくれる雇い人かどうかの判断が非常に大事になります。

次にやったのは、工事材料運搬するトラックの購入です。

お寺の経営者は、知人が中古車の販売をしているからと、案内してくれました。中古車は、店舗に置いているという訳ではなく、日本だと不法駐車となる両側の道路脇に沢山並べていました。ハッキリは覚えていませんが、購入した2トントラックは、2~3万元だった様に思います。

車検制度そのものが無い様で、購入したトラックは中国製でしたが、頻繁に故障し、修理費がその都度発生し大変でした。トラックを手に入れた後、トイレのドア、飾照明や工事用の資材も、リョウさんと2人で頻繁に買い出しに出かけました。

私が本業で忙しい場合は、全てリョウさんが買出しに出かけましたが、領収書の枚数も非常に多くなりました。ただ砂、煉瓦、セメントなどは量も多く、業者の方からお寺まで運んでも貰いました。

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