【精進料理店】14.弁護士の雇用

ソウさんには店に来て貰い、建物の賃貸契約の終了を申し出ると共に、契約解除の手続きの話、契約終了に至った理由等の説明をしました。

ソウさんからは、明日自分のマンションに来てくれと言われ、彼の家に出向きました。  『九十九さんとの賃貸契約期間は5年なので、残りの4年余の賃料を全額払って頂きたい。敷金の5万元はその一部として預かる。』と言い、かつ『店の什器備品類等は、この問題が解決しなければ、持出しは許さない。                            無理に持ち出すのなら、お寺の従業員を使って、搬出を阻止する。』と言われました。

その時私は私の性格からして、自分でも信じられない位、冷静だったのが不思議でした。  とにかくその場は、何も言い争うことなく終わりました。

先方は何も知らない日本人だから、残りの4年余の賃料まで取上げるつもりだったと思います。取上げる事が出来ると確信していた様です。

私は、この問題を解決する方法において、どうしたら良いか殆ど頭を悩ますことはありませんでした。というのも、私には、解決するための方策が1つ『中国人からの難題は、同じ中国人に解決を依頼する。』ことしか、浮かばなかったからです。私は、直ぐ観葉植物のレンタルをしている黄さんに、弁護士を捜してほしいと頼みました。

2~3日して彼の案内で、桂林の中心街に近い所にある弁護士事務所の先生に会いました。  名前は忘れてしまいましたが、中年の女性でした。

事務所は、2~3人つめて居る事務所でしたが、唖然としたことに、日本の弁護士事務所の様に書棚に本が一杯と言うことではなく、多少の本が壁の書棚にあったものの法律の専門書と思われる本も殆どなかったことです。                           僅かに大きな机の上に、広げられた桂林晩報の新聞紙が高さ10cm程度積みあがっていたのが目につく程度でした。

私の想像ですが、『中央に政策あれば、地方に施策あり。(中央が決めたことも、地方の権力者に不都合であれば、逃げ道を考え対応すると言う意味)』という様な国ですから、法体系も法律、条令、規則等の関連性がキチンとしている日本と違い、力こそが法で、時の政治家や役人の手に裁量が委ねられるため、法体系が整備された書物も無いのではと考えました。

私は、一通り事実関係と依頼内容を話し、着手金として確か1200元程だったと思いますが支払いました。彼女は、お寺のソウさんのもとに何回も顔を出し、話を進めてくれました。

一方私の方も、契約終了を申し出ても敷金などが戻らない上、従業員を解雇し休業すると、 お寺側に什器、備品等を持ち出される恐れもある為、完全解決までは、店の営業を続けざるを得ませんでした。

途中で、黄さんや店長の李さんが『弁護士の態度が変だ。お寺の経営者と楽しそうに話している。弁護士は、お寺の経営者の味方になったかも知れない。』と言いました。      『既に2ヶ月近くになろうとするのに、こちらには、弁護士の先生からは何の説明もない。 おかしい。』というのが2人の意見でした。

私は、他に取るべき手段も無いため、先生からの話を待つしか方法がありませんでした。  ただ中国人の気質からして、長い時間争い事をやることは望んでいないのではないかと、思う気持ちもありました。

結局、ソウさんの希望も組入れた解決策、内装工事で建物に付随するもの、ドア、硝子、便器などは持ち出さないこと。敷金は契約終了後から両者同意する迄の期間の賃料を差引き私に返却するということで、決着しました。

この間弁護士の先生は、10回ほど足繫くお寺に通い続けたそうです。

私は弁護士に感謝の気持ちを込め、お礼として500元渡しましたが、お礼を予想していなかったらしく、非常に喜んで貰いました。

後日その弁護士からお礼として夕食の招待を受け、彼女が予約したレストランへ行きました。                                        料理そのものは、桂林の他の店でも出されるものとさほど変わりませんでしたが、彼女のお勧めは、御飯でした。中国は国が大きいため、南方のタイ米に似た細長い米から、日本の米に似た(中国)東北地方の真珠米(ただし日本米より小粒)など、米の種類も豊富です。日本のコシヒカリ等も中国で栽培 され市場に出回っています。                   今まで私は、日本の米の方が遥かに美味しいと思っていましたが、そのレストランでの御飯の味は、また格別でした。                               米の甘みに加え、僅かですが餅米みたいに粘り気がありますが、それでも歯ごたえは良く、今までに食したことが無いものでした。                         残念ですが、新潟魚沼産のコシヒカリより美味しく感じました。             レストランの人にコメの種類や産地を聞きましたが、企業秘密らしく、教えてくれませんでした。

弁護士で思い出しましたが、実は弁護士との接触は、のちに1件成都でありました。

(成都には、数多くの一部上場日系企業が進出していますが、事業展開の過程で、中国では例外なくトラブルに巻き込まれている様で、弁護士への相談や事件解決への依頼は必須だと思われます。                                       日本本社の法務部門社員が、日系企業のトラブル解決のために中国に派遣されても、『中央に政策あれば、地方に施策あり。』の国であることを理解せずに『正論を振りかざして』推し進めようとすることで、多額の弁護士費用と裁判費用を払いつつ、結局は敗訴している多くの現実があります。                                   裁判官だって、被告と原告を別々に呼んで、右手は原告からの袖の下を、左手は被告から袖の下を要求し、金額の多少で判決が左右される世界です。)

私はこの時、事件の解決の為に弁護士に仕事をして貰うのではなく、解決方法の相談と言う形で、成都の日本人会の紹介する弁護士に会い相談しました。

その弁護士は、日頃から日系企業を主な顧客としていて日本語が出来る弁護士であったことから、希少価値もあり、日本での弁護士に支払う費用を超えた相談料を要求していたのでしょう。私は、当時中国の貨幣価値をある程度理解していたため、要求された相談料が日本以上に高すぎると、直ぐに思いました。

言い方は悪いのですが、中国の日系企業が中国人弁護士にカモにされ、騙され続けている状態です。そして解決策は、本社の指示を仰ぐ正論でしょうから、自ずと壁にぶつかります。  そうすると否応なしに裁判になり、弁護士や裁判官の懐を更に温めることになる訳です。

私が相談したことも結局のところ、相談した弁護士からは解決方法を見出せませんでしたが、社長が施策を見つけて解決してくれました。

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