【精進料理店】1.出資・開店の検討

2009年3月末で会社を定年退職し、4月末に中国広西省桂林市で観光関連の仕事に飛び込みました。

サラリーマンとして管理畑を長年歩んで来ましたが、商品販売と言う今までの経験が全く生かせない道に入り込んだため、最初の1~2ヶ月は売上も少なく、中国人経営者から、いつ首だと言われてもしょうがないという状態でした。しかし商品販売に対する考え方を根本的に変え、自分自身が商品の良さを確信して販売する様に出来たことから、お客への説得力も増し、次第に売り上げも順調に伸び、1年半程で私の蓄えも増えて余裕が出て来ました。

そんな時期に、精進料理店開店の話が、知人のリョウさん(30過ぎ)からもたらされました。 最初に書いた通り、私はずっとサラリーマンでしたので、飲食店を経営したことも、飲食に関するノウハウもありませんでした。お寺の経営者とリョウさんは、経営者の奥さんを通じた親戚関係にあり、経営者から精進料理の出店先を探すことを頼まれたということでした。

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場所は、『佛光岩』と言うお寺の2階の2/3の面積で約100坪、2階には、お寺の1階中央から2階に階段を使い行く方法と、建物左端の外階段(コンクリ製)を使い行く方法の2通りがあり、2階の100坪のフロアーは、コンクリで大きく2区画に分かれていました。

建物左端の外階段(コンクリ製)を使い建物に入ると、建物の2階のコンクリの床は、裏山から染み出た水で絶えず濡れてヒタヒタト流れ出ており、大きな七輪の上に黒い大きな中華鍋が乗っていたり、他にも料理鍋が2~3個転がっている状況で、従業員の調理場、洗濯場所、洗濯物干場になっていました。30坪程度だと思われます。                    窓の庇(ひさし)部分は、時間が経ち木や鉄枠が腐り、雨が降れば、建物内に浸みこむような
状況でした。

大きな煉瓦の間仕切りがあり、その奥に70坪前後のスペースがありました。埃が積み上がった机や棚、ガラスのショーケースなどの残置物から、以前は観光客や拝観客相手にお茶を出すお茶屋や宝石店であったようでしたが、私が下見した当時はお寺の従業員用の2段の仮設ベッドが置いてあり、非常に薄汚く、ネズミが徘徊している状況でした。            そこは、10人前後の従業員が寝起きしていた様でした。                 入口を入った部屋も、その奥の部屋も特に南側すべての窓がベニア板で覆われていたこともあり、非常に暗く陰気で、また大きなネズミも徘徊していたため、不衛生な感じは免れない状況でした。

それからこの『佛光岩』という寺に限らず、中国の寺の大半は、日本の寺とは全く異質なものです。殆どのお寺の経営者は、利益追求にだけに関心を持ち、全く仏教に関心がありません。この点は、後日詳しく書く予定です。

本来お寺に必要な坊さんも、経理も、電気の管理技士も、掃除夫も、入場券の販売者も、警備人も、旅行社への営業活動をする人も、全て経営者が雇います。             さほど大きな寺とは思えない『佛光岩』の従業員も30人程は在籍していたと思われます。  特に『佛光岩』の場合、お寺と言うよりも、パンフレットの写真からも分かるように、仏教に関し世界に点在しているものを一ヶ所で、コンパクトに見て貰うための仏教博物館の趣があります。 観光客は1階建物中央から入館し、建物と直結した1Km程度の長い洞窟の中を見学する様になっています。

私は、精進料理店をやるかどうか迷っていましたので、上海のフーさんに一緒に店の経営をしないか話を持ちかけ、フウーさんが出資すると言ったら私もやろうと考えました。     彼に電話したら、 『九十九(つくも)さん、私に話を持ってくるのだったら、売上のゼロがもう一つか二つ付く話をもって来て下さいよ。黄山(安徽省)や峨眉山(四川省)で、精進料理店を開くのであればお客も多いだろうから、出資しても良いよ。しかしこれらの有名な山で、空き店舗を探すのは難しいよ。』と、笑われました。

『私は精進料理の事も全く知識がないし、仲間のフーさんも出資しないから、私は降りる。』とリョウさんに言いました。彼も一旦は諦めたものの、『改築工事の費用は九十九さんが想像する程ではなく、もっと安くできる。私も手伝うから。』とその後、数回言ってきました。

最後に『桂林観光協会の会長にも経営に参画して貰い、中国国内観光客を沢山引っ張って来て貰うことになっている。だから是非精進料理店をやって欲しい。』と言って来ました。   近くにある桂林の国内向けの別の観光地『劉三姐(リュウサンジェ)』には、毎日旅行会社のガイドの引率で、夕方から大型バスが50~100台も来ている状況を私も頭に浮かべました。

私は、どうせ一度の人生、普通のサラリーマンだったら100坪の店舗を構え、十数人の従業員を雇うなんて日本ではとても出来ないこと。やってみるかと言う気持ちになりました。  ただし採算や運営上の問題があれば、投資金額に躊躇することなく、6ヶ月で手を引くことを決心しました。私自身、今まで大半の日本人が中国人に騙されたのを見たり聞いたりしていましたので、騙されるのは覚悟の上の、ゴーでした。

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