【黄さんのビジネスと周囲の人々】9.防盗門の販売

私が、精進料理店を閉める時、エアコンやトラックを黄さんに売って貰いました。彼は、携帯電話に保存した番号からあちこち電話して転売して呉れました。

恐らく彼なりに口銭を取り、残りを私に渡していたものと推測しますが、それはそれで私としては仕方が無いことと思っていました。

また綺麗な玄関口のシャンデリアは、植木鉢を幾つもサービスで入れてくれたこともあり、黄さんへプレゼントしました。

残ったイスとテーブルは、黄さん自身が無料のマンションの空いたスペースを見つけ、そこに人を2人程雇い、私も含め4人で運び込みました。

私は、黄さんと店長だった李さんを前に、『イスとテーブルは全て2人にあげるから、2人で時間を掛けて売るなり、友人にあげるなりして下さい。』と言い、成都に発ちました。

後日、桂林に寄った際、李さんにイスとテーブルはどうなったかと聞いたところ、

『私は、黄さんから、「九十九さんは店の開店の時、私(黄さん)から多額の借金をしておりお金を返してくれないので、全てのイスとテーブルは私のものだ。」と言われ、それを信じていた。』と言いました。

結局のところ、彼女は何も貰えなかった訳で、黄さんだけが一人得した形でした。

李さんを騙した黄さんも、大金を入れた自分の財布を従業員に持ち逃げされる有様で、この様な騙し・騙され、盗みのトラブルは日常茶飯事です。

黄さんは、私が成都に移った後、桂林で店を構え防盗門の販売のビジネスを始めました。

その経緯については、聞いていないので良く分かりませんが、窃盗が多い中国においては、防盗門の販売は大きなビジネスになっています。

特に中国では、マンションがスケルトン渡しなので、日本の様に玄関ドア等を含め内装工事の全てを建設業者が決めて施工すると言う状況では無く、防盗門の選択は個々のお客が決めることから、営業努力による販売拡大の余地は沢山あると思われます。

更に今後は従来の鍵ではなく、電子錠や指紋認証等の機械も普及していくと思われますので、将来に向かっても非常に大きな市場だと思われます。

防盗門とは、意味は分るものの馴染みのない言葉ですが、『防犯ドア』や窓に取り付ける『鉄格子』のことを言うようです。

私が桂林で社長に借りて貰った広い部屋のマンションの入り口の防犯ドアは、外から1個の鍵穴にカギを入れ270度廻すタイプでしたが、90度廻る毎に、扉の上、下、横から錠枚の爪が次々に出てくるタイプでした。

玄関から中に入ったら、鍵の爪の強度を増す為か、3個ほど内側から施錠する錠枚がついていました。

製品は、盗人とのいたちごっこの感は免れませんが、いろんなタイプの商品が販売されています。一例として、ヤフーの検索で出て来た写真を載せます。

窓に取り付ける鉄格子は、外からの侵入を防ぐために取り付けるものですが、結構上階のマンションでも、屋上からロープを垂らして侵入することもあり、鉄格子を取り付けています。

さながら自宅自体を檻で囲み、外から見ると刑務所や精神病棟の感がありますが、火事の時、窓から消防隊が救助出来なかった等のトラブルも発生しています。

何れにしても、中国においては、必須の防犯設備と言えます。

単価は安いが、確実にコンスタントな収入が得られる植木のレンタルのビジネスを基盤に、次は僅か数年で、設置費込のワンセット数百元~数千元の防盗門ビジネスへ、少しずつ金持ち経営者への階段を昇って行っている様です。

資金力、法律問題等の乗り越えるべき壁も低く、頭を使い少し努力すれば誰でも参入できる市場、大型スーパーや大型ホームセンター等の巨大流通企業が支配・独占する状態の今の日本では考えられませんが、こんな時代はひょっとしたら、日本でも戦後間もなくの混乱期だったら、あったのかも知れません。

これで、【黄さんのビジネスと周囲の人々】の部を終わりとします。

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