新しい料理長の下で営業を行っても、市の中心部から離れており、前面の道路は車の行き来はあるものの昼夜を問わず歩いている人も少なく、集客に苦戦していました。
辞めた料理長が店の評判を落とすことを言って廻った影響もあり、常連客も少なくなりました。この為賃料も値下げ交渉し、途中から4000元迄下げて貰いました。
当初期待していたお寺自体への観光客の来訪増加は、経営者や観光協会会長はそれなりに努力をしたのでしょうが、殆どありませんでした。
すでに店舗工事開始から9ヶ月、開店から7ヶ月位になっていたと思います。
ある時、お寺の経営者ソウさん、観光協会の会長、リョウさんの3人が、私の所に来て『団体観光客へ提供する1回の食事代を12元/人にして欲しい。』と言って来ました。当時のレートで160円~180円/人です。
要は薄利多売のため、かなり客数を増やさないと赤字が膨らむし、他の一般客との兼ね合いや、昼食や夕食の限られた時間での調理する料理人の不足、調理場の狭さなど、即座に問題点が幾つも浮かびました。
100人が一度に来ても、多忙な割に1.6~1.8万円の売上にしかなりません。また200人も300人も受け入れる体制は、整っていません。
私は開店以来、大型バスに乗った観光客が大挙して押し寄せお寺を見学する場面に一度も出会わなかったこと、即ち当初の約束が守られなかったこともあり、お寺側に対する不信感を増しました。
結局、当日夜、かなりの時間を割いての私への説得は、失敗に終わりました。
数日後こちらも店長や料理長と相談し、『売上を増やす為、精進料理だけではなく、顧客の幅を広げることが出来る肉料理もメニューに加えたい。』と、お寺のソウさんに申し出ました。
ソウさんは、『あくまでお寺に付随する精進料理の店として営業することを承認したのであって、肉料理なんて、もつてほかだ。』と話し合いは、決裂致しました。
私としては、今真面目に働く従業員を雇っていることもあり、売上が増えれば何とか店をやっていけると考えた提案でしたが、お寺としては許可出来ないということも事前に予想した上での提案でした。
数日後私も決心し料理長や店長の同意も得た上で、お寺のソウさんに対し、建物の賃貸契約の終了を申し出ました。