スケボーに乗った乞食と石の加工職人

当社の外国人向けのショールーム、また近くには中国人観光客向けのお茶の販売店、漢方薬工場での薬の直接販売等などがあり、観光バスが毎日沢山の観光客を連れて来ていました。

建物の前面が、観光バスが列をなして駐車出来る広場となっていることもあり、いつの間にか観光土産を手に持って商売する人々も出て来ましたが、期待する程売れない場合、直ぐに場所を変えて、他の観光地や土産物屋の方へ移動していました。

そういう中で、この場所に定着した人が、2人いました。

1人は、いつもスケボー(スケートボード)に上半身だけを載せ、地面にお金入れを置いた乞食でした。年齢も、40歳前後と思われました。

私も職場の仲間も、実は皆彼を見るとだれもが、首を傾(かし)げていました。

というのも、板の長さは関係ありませんが、僅か20cm前後の幅しかないスケート板に、腰から上しかない体だけが乗っかっていたからです。                                                          この時彼は、胴の長さに合うだけの松葉杖を両手に持ち、体のバランスを保っていました。

同じ人間からすると、奇異な感じを抱かざるを得ない風景なのです。

本人は紺色の丸首のシャツを着ていましたが、仲間と一緒に真上から見ると、はみ出た上半身で乗っているスケボーの板が見えない状態でした。                   手許に写真が無いのが非常に残念で、また説明もしにくいのですが、横から見ても、斜めから見ても、1周して見ても、胴から下は無い様に見えました。

松葉杖は交通事故を連想させますが、観光客はこの姿を見て、この人物を不憫に思い、お金を恵んでいました。

もし仮に交通事故等で腰から下を失った場合、果たして生きて行けるのか、仲間の間でもいろいろ意見が分かれました。

それがある日突然解明され、みんな『なーんだ。!』という結末に終わりました。

実はその日は朝方から蒸し暑い日だったのですが、昼頃に暑い日差しから突然のスコールとなりました。

余りの雨の激しさから、その乞食は立ち上がり、スケボーを傘代わりに右手で頭の上に載せ、左手は短い松葉杖を持って、一目散で避難して行ったのでした。

足は細く、体全体も非常に痩せていたため、シャツの下で上手く足を折り、腰から下が無い様に見せかけていた訳です。

[ただ私が想うに、僅か20cmの板なので、両足を一列に置き、膝を普通に前に折るとシャツの下の方が膨らむ為、折った膝を真上に向けないとダメです。               そうする為かなり無理な姿勢を長く保っていた訳ですから、それなりの訓練もして来たと思われます。                                      欲を言わないなら、飲食店の店員などの仕事もありそうなのに、なぜ乞食を業とするのか、本人でないので良く分かりませんが・・・・・・。                    きついけどこちらの方が稼ぎが良いのかも知れません。

その晩マンションに戻り、スケボーや松葉杖はありませんが板巾20cmを意識しつつ、私も同じ様なポーズを保って見ました。                           しかし折った膝を真上に上げることが出来ず、どうしてもTシャツで腰の部分が膨らみますし、またそれにも増して、無理な体形で体の安定を保つことが非常に難しいことを実感しました。残念ですが、わたしにはこの乞食の様には稼げません。

みんな納得し、それからはスケボーに乗った乞食に、関心を持つ人は無くなりました。

もう1人は、写真の様に、桂林を流れる漓江の川底から石を拾い、鳥や亀に加工して販売する人でした。この人は30歳から40歳の間と思われる口数の少ない人でした。

長さ7~8cmの鳥や亀の小さな置物を売ってましたが、日本語が出来ないため、日本人観光客の中には手に取って興味を示すものの、値段が分からなく購入しない人も見かけました。        その後、彼は1個20元等の価格を紙で表示しました。

ある時私は日本人観光客向けに、5個1000円又は1個20元と言う価格表と、漓江の川底から採取した石を手作業で加工したこと、置物だけではなく箸置きとしても使える等の説明をPCで作成し、A4の透明アクリル板の中にプリントした紙を入れて、渡したりしました。       従来であれば、日本円が使えないと感じていた観光客も日本円が使えること、また箸置きとしての利用方法もあることも知り、多くの人が購入して行きました。                                また私も日本に帰国する際、荷物として嵩張らないことから、幾つかプレゼントとして買って行きました。

円と元との両替は、日本の1000円札がある程度集まった時点で、私の会社で交換して貰いました。

ただ観光客の中でも、特に韓国から来た朝鮮人観光客は客質が悪く、韓国の紙幣を1枚ポンと投げ、5個も10個も商品を両手で鷲掴みにして、足早に観光バスに乗り込むケースも目立ちました。                                       彼はその都度、投げて置かれた紙幣を手に持ち、商品を回収のためバスに乗り込んでいました。韓国の紙幣で払ったと言っても、お金の価値は日本の1/10程度です。                            彼が製作にかけた労力からして、とても売る気にはならない値段なのです。

朝鮮人の観光客は、売る側には韓国紙幣の価値が分からないと考えて、その様なことをするのだと思います。                                                                                                      朝鮮人の観光客は、この様に安い紙幣で品物を持ち逃げすることを、あちこちでやっている様です。

桂林から成都へ出発する時、彼は私にお礼にと言って、漓江の川底の石で結構重量感がある横25cm×縦15cm×奥行12cmの坊さんの石像を私の為にわざわざ作り、プレゼントしてくれました。                                       私は、彼からのプレゼントを傷をつけない様梱包に気を配り、日本に持ち帰りました。   この像を見るたびに、『今頃彼は、どうしているのだろうか ? 』と気になります。

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