ビアガーデンの出店計画

静慮荘の開店をする前、リョウさんと一緒にビアガーデンを開店する準備をしていましたので、この件について書きたいと思います。

(ビジネスの可能性)

桂林では、夏は暑く夜遅くまで、露店の飲食店が賑わっています。

日本でも夏などあちこちでビアガーデンが賑わっていますが、私は、なんとか桂林でビアガーデンを開店出来ないかと思いました。

そこで友人の何人かに意見を聞いたところ、『ビールを中心に飲食させることは、商売にならない。』と、言うのです。

その理由は、日本と違い、税金がほとんどかからない中国のビールは、売値が安すぎるため、どんなに飲んでも利益が少ないというのが理由でした。

白酒や古酒等それなりの売値がする酒類と異なり、値段的には日本ではジュースやコーラを飲む程度の値段です。

しかし私は、この問題は、大した問題では無いと考えました。

安いビールを相手にしないで、日本のアサヒやキリンを始めドイツのハイネケンビール等外国産の値段が分かり難く、また輸入税が入って値段が高いビールを飲んでもらおうと考えました。(桂林で一番大きいデパートの微笑(ニコニコ)堂の地下食料品コーナーでもこれらの品を販売していますので、仕入れルートは確保出来ると考えました。)

ウイスキーやワイン同様、お客のプライドをくすぐる外国製品を中心に販売すれば、口コミで必ずお客の評判を得られると判断しました。

(場所探し)

そこで最初に思いついたのが、桂林に多い鍾乳洞での開店でした。

鍾乳洞と言っても、余りに市街地から離れるとお客がいませんので、場所が限られてしまいます。鍾乳洞なら、夏は涼しいかひょっとすると多少寒い位なので、エアコンで微調整の対応をしても良いのではないかと考えましたが、場所はあっても、倉庫として使用していたりして、中々難しい状況でした。                               また鍾乳洞等の使用は、陸軍の許可も必要とかで、結局実現しませんでした。

中国に来て、なぜビルの屋上が有効活用されないのか、不思議に思ったことがありました。

マンションなんかでは、一番上の階を所有した人が、屋上に勝手に建物(日本だと仮設住宅程度のもの)を建てて、他人に賃貸しているとか、身内を住まわせているとかするケースは沢山見たり聞いたりしました。                                聞くところによると、屋上の所有権がハッキリしないため、規制する法律が無いためとのことでした。

しかしマンションと違い、ビルの屋上となると、全くと言っていい位、利用されていません。

今はどうか知りませんが、私のビジネス仲間のヨウさんに聞くと、上海でも屋上をビジネスに利用しているケースは知らないと言います。                      ビル屋上でのビアガーデンは、中国ではほとんど無かったと思われます。

そこで私の仕事の合間や仕事が終わってから、あちこち桂林市の繁華街にある大型ビルの屋上を見て回りました。全部で10ビル以上は、調査したと思います。

その殆どが、間仕切工事の残材や無造作に使われなくなった家具等の不用品が、ゴミとして放置された状態でした。

屋上の施工方法が日本とは違い、殆どに上面に施された薄いコンクリートが剥げ落ちて、日本でも見かけるのと同じタイプのコンクリートブロックの地肌が見えたりや割れたりしている状態が見られました。(集中豪雨の多さや、太陽からの温度上昇が影響しているものと思われますが、これらは日本の普通にある屋上のコンクリートの上に、更にブロックを1枚寝かせた形で、屋上全面が更に薄いコンクリートで覆われた構造となっていました。これは、ブロックに空間部分が多いことから、太陽光によるビル屋上への熱伝導を弱める効果があると思われます。2重のコンクリート構造の為、雨漏りは無いと思われます。)

いろいろ探した挙句、桂林の中心街で最高の場所を見つけました。東京だと、銀座三越の近くの大通りに面するビルの屋上と言っても良い場所です。東側には、いろんな催物が行われる中央広場が目の前に、そのほんの少し先には桂林漓江大瀑布饭店(桂林漓江ウオターフォールホテル:1日に何回か決まった時間に屋上階から水を流す。下の写真参照方)も、遠方には曲がりくねった川の一部も見えます。夏は花火もあちこちから揚がるため、ここは花火を見学するのも、最高の場所です。

(候補ビルの仕様)

建物の正確な階数は忘れましたが、8階の屋上だったと思います。            ここでは、話を進めやすくするため、8階とします。

その屋上に行くためには、2つの方法があります。一つは、ビルの北側端にある大型エレベーター(商品の出入り用)で、7階迄行き、幅が広い階段を1階上がり屋上に出る方法、もう一つは、1階のホテルロビーからエレベーターで8階まで上がり、8階のホテルの中の通路を真直ぐ北側に突っ切って、現在は閉鎖されているドアから屋上に出る方法です。

更に良いことには、北側の屋上の一部が昔従業員の宿舎になっていた様で、小さいながら建物も残って居り、電気、水道も確保され、更にトイレもありました。(現在は、利用されず。)

夏の夕暮れや、光輝く夜景が何とも言えない程綺麗で、それも桂林の中心街でビジネスを開始出来ると思うと、非常に気持ちも昂(たかぶ)りました。

屋上から見える夜景の美しさから、内外の観光客も沢山呼び込めると思いました。

(契約の内容)

建物の所有は、南寧(広西チュワン自治区の省都)に本社がある通信会社でした。

建物の中下層階は、飲食、服飾などの無数のテナントが入っており、それから上は一つのホテルが入居していました。ホテルの名前は忘れましたが、主に国内のビジネス客や国内観光客を相手にするホテルでした。

このホテルは、建物すべての管理を通信会社から委託されていた様で、こちらもビアガーデンの計画の詳細を示し、リョウさんがホテルの女性マネージャーと契約内容を詰めました。

ホテルのマネージャーから、現状宿泊客に朝食サービスが出来ないため、朝食のサービスを提供するということが、先方の大きな条件でした。                    このホテルは位置からして、桂林市の一番中心街にあるため、外で食事する人の方がむしろ多い様な感じでした。                                 ホテルのマネージャーもそのことはよく理解していた様ですが、ただ旅行会社に対するアピールの度合いの点で、ホテルで食事が出来る、出来ないでは、雲泥の差があるとの事でした。

私の方も一度に10人前後なら、従業員の宿舎スペースを当てれば何とかクリアーしそうに思えましたので、確約しました。

また肝心の賃料ですが、賃料は500坪の面積を、月3000元程度だったと記憶しています。(敷金などはありません。)更に冬期は、賃料を半分程度に抑える内容だったと思います。通常ビル内のスペースなら、桂林市の超一等地の500坪ですから、何十万元かはすると思われます。

トイレが不足する場合は、お客にホテルのトイレも使わせてもらう事も、認めて呉れました。

マネジャーも、通信会社の許可を得るため内容を説明し、先方の許可も得た事から、こちらも考えて来たアイデアを実際の形にして、テストを始めました。

(店舗計画)

屋上全部を使うとすると500坪ほど使えそうでしたが、取り敢えず300坪を使用することで計画しました。

屋上の概略の平面図を作りましたので、これを参考にして下さい。

まず、正方形のマスが沢山ありますが、これは発泡スチロール(正確な大きさは忘れましたが、1個が横縦各1.5m前後で高さは0.7m程度だったと思います。

(マス目の数は正確では無いため、目安と考えて下さい。)

これをかなり敷き詰めます。

そうしないと、屋上の手すりとして作られた1.2m程度のコンクリの壁が邪魔になり、座った状態で街の景色を見ることが出来ません。

それから2段目にも、発泡スチロールを敷き詰めます。これは、奥の人も周囲の人が座っていても景色が満喫出来るように考えたものです。

発泡スチロールと言っても、私たちが良く見かける物とは異なりかなり硬く、人が乗った位で、凹んだり傷がつくようなものではありません。硬くなっていることもあり密度が高いため、それなりの重さとなりますが、同体積のコンクリートや木と比較すると、ずっと軽いものです。また表面に難燃処理を施して貰い、タバコの火等で火事にならないことも確認しました。

発泡スチロールを敷き詰めた後その上を更に全面をカーペットで覆い、溢(こぼ)したビ―ルで足を滑らせない様に考えました。

あれこれ試行錯誤の末、何故大きな発泡スチロールを使ったかというと、元々屋上のコンクリート床面が傷んでいる箇所もあり、真面(まとも)に補修しようとするとかなりの費用が発生する事や、設置する時と同じく退去する場合にも、お金を掛けないで迅速に簡単に処分出来るという点から、考えたものでした。

ただ夏の夜8時頃まで明るく日差しが強いための対策、突然の雨に対する対策として、各テーブルにパラソルやテントを設置する事を考え、取り敢えず、発泡スチロールを数個購入して、パラソルを建てたり、テントを張ったりして実験しました。                テーブルも真ん中に穴がありそのままパラソルの支柱を降ろし発泡スチロールのあけた穴まで、パラソルが立てられるものを選びました。

実験の結果、特に風が強い日はパラソルがひっくり返ったりしましたので、風に対する十分な対策を考えることが出来ませんでした。テントは、パラソル以上に設置に手間取ることや、 風が強い日の風圧はどうしょうも無いほど大きい事が判明し、使う事を諦めました。

そこでその日の気象条件で臨機応変に、日によってパラソルを立てたり、立てなかったりするよう、方針を変えました。

ただ突然の大雨については、一時的に旧従業員宿舎を多少改装し、これに充てるしかないと判断しました。場合によっては、ビアガーデンを一時的に営業中止することも想定致しました。

集客方法としては日本と同様、大通りでのチラシの手渡し、屋上からの大音量での音楽演奏、旅行会社へのコース設定勧誘等を考えました。

(運営方法)

お客から『ビールだけでなく、他の酒も出せ。』と言われる可能性が大きい事が、一番気になりました。なぜなら他のお酒となると、ビールの様に紙コップで出せないからです。    酒のビンを酔った勢いで、屋上から下の道路へ投げ捨てられるという心配があるからです。

ですからこの様な時は時間を掛けて、あの店は外国のビールしか出さない店として、お客に認知してもらうしか方法が無いと考えました。

東西にある1.2m程度の屋上のコンクリート壁を越えて、お客が紙コップを投げたり、食べ物を投げ捨てられない様、コンクリート壁の周囲には、1.2mの壁の上に更に高さ2m程度の金網のフェンスを作ることも考えました。

食べ物は、全て紙の皿で、鍋物はインスタントラーメンの様に発泡スチロールを考えました。燃料としてプロパンガスを持ち込めば、焼き鳥、たこ焼き、鍋物等の各コーナー毎に纏め、そこまでお客に行って貰って、見て好きなものを注文できるような形を考えました。

そうすることで、ウエイトレスも不要で、従業員の数も減らせます。           ホテル側からの要求、朝食を提供することは別に考えると、上手く行けば会計やマネージャー以外、営業時間帯を考慮すると学生のアルバイトでも十分可能です。

それから、これはリョウさんの提案でしたが、各料理コーナーは、桂林のいろんな店に声を掛けて出店して貰うという案でした。                          こうすると、人件費の節約だけではなく、桂林の人が好むものを提供できます。      仮に売り上げが増えないコーナーがあれば、業者を入れ替えることで対応可能ですし、業者の口コミでの宣伝の効果も狙えます。

【当面は、ビアガーデンは、夏季限定として開始し、朝はホテルの客に朝食の提供。客数の増加に伴い、春、夏、秋でオープン。夕方4~5時からビアガーデンの開始、11時閉店。チケット販売で、各コーナーでは現金処理としない。】を考えていました。

(突然の契約破棄)

ホテルのマネジャーから、リョウさんへ突然電話が入りました。

一緒にホテルに出向くと、契約を解除したいと言っています。

理由は、建物の所有者である通信会社の役員がたまたま南寧から桂林に来て、建物の屋上に発泡スチロールが置いてあるのを見たそうです。

そしてマネージャーへ聞いたそうです。マネジャーは、今回の私たちの計画のあらましを説明したところ、『以前他のビルで通信施設に近い所で、ボヤ騒ぎが発生したことがあり、火を使う事は厳禁だ。』と言われたというのです。

南寧の通信会社の事務方には説明し、既に了解を取っていたとのことですが、この役員まで話が行かなかった様で、その場で契約を解除する様に言われたとのことでした。

ホテル側にも私達にも両方にメリットがある話なので、何とか了解を取れないものか思案しましたが、結局は諦めざるを得ませんでした。

静慮荘の話は、精進料理というビジネスそのものにはほとんど魅力を感じませんでしたが、このビアガーデンは、私自身非常に乗り気だっただけに、残念な気持ちは今でも残っています。

正面のビル屋上で、ビアガーデンを計画。

屋上の真ん中から左側の更に高くなった白2線の建物がありますが、ここには通信会社の通信設備が置かれています。暗くて見にくいのですが、白2線の真下がホテル一部で、この白2線の内の下の白線をずっと右に伸ばした部分が、1.2mのコンクリート壁で、ここの部分500坪を賃借する予定でした。

下の地図で、オレンジ色で示した部分が、屋上を賃貸予定のビルがある場所。ビル前面の多少黄色が目立って囲まれた部分が『桂林中心广场』(この地下には、数㎡単位で賃借している衣類、スマホ、ネィルサロン等の無数の店舗がある)、更にその先にウオターフォールホテルがある。

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