幾つかのトリッキーな現実

■暴発するスイカ
夏の暑い朝、職場に向かう途中で、果物屋の店頭にスイカが売られていたため、2等分に割られ十分熟れている事が確認できたスイカを、1個買って行きました。
スイカの外側は、日本でも探せば見つかるのでしょうが、黒と緑の縦の縞模様ではなく、日本ではあまり見かけない全体が黑緑色をしていました。

女性が職場で細かく包丁を入れ切って手渡していましたが、中にクレームを言う仲間がいました。
『九十九さん、今度はこんなスイカは買ってこないで下さい。』と彼は言ったので、私は『なぜだい。十分に中が熟れているじゃないか。』と反論しました。
彼は、『スイカを良く見て下さい。黒い種もあるけど、黄色や白い種も多い。黄色や白い種が多いと言うことは、果肉は赤くて熟している様に見えるけど、本当に熟したスイカでは無いと言うことなんです。』
『これは、スイカに成長ホルモンを注射器で打込んだスイカですよ。』
私はビックリして、『中国では、全てホルモン注射を打つのかい?』と聞きました。
彼は、『全部ではないけど、農家の中には特にスイカが出始めの頃、早く出荷すると高く売れるために、成長ホルモンの注射をする農家もあります。』と、更に『果物屋の店頭に置いてあるスイカが、外側が硬い皮の為、中の果肉のみが成長して突然暴発することもあるのです。』と教えて呉れました。
ですから、この話を聞いてからというもの、中国に限らず、日本でもスイカを吟味して買う様にしています。

しかし、成長ホルモンの問題は、何も中国だけではなく、アメリカの牛肉も問題がありそうです。ネットでも『成長ホルモン』と『米国産牛肉』で検索すると、沢山の情報を見ることが出来ます。皆さんも調べて見て下さい。

例えば、ウィッキ―ペディアでは、

《アメリカでは、牛を短期間で肥育させる成長促進剤として、ホルモン剤の投与が行われている。アメリカ産の牛肉には、女性ホルモンの一種であるエストロゲンがホルモン剤を使用していない国産牛肉と比較して、約600倍の残留が検出されている。なお、ホルモン剤の使用は、日本やヨーロッパでは禁止されている。

エストロゲンは女性の成長に必要なホルモンであるが、外部から摂取することは、ガンの発症に関与していると考えられている。牛肉消費量の増加とともに、ホルモン依存性がんの患者数が約5倍に増加していることから、アメリカ産牛肉がガンの原因であると示唆されている。》と書かれています。

要は、成牛にする迄の期間を短くして、飼料代を減らす等のビジネスとしての利益率を高める方法に、成長ホルモンが使われている訳です。                     ですから中国に限らず、私たちが知らない状況の中で、無意識に食べさせられる可能性が何処の国でも生じる問題として、十分な注意を払う必要がありそうです。

■冬虫夏草
冬虫夏草について、ウィッキ―ペディアでは、次の様に書かれています。
チベット高原やヒマラヤ地方にいるコウモリガ科の蛾の一種(中国語: 蝙蝠蛾)の幼虫に寄生する。

蛾は夏に地面に産卵し、約1か月で孵化して、土にもぐりこむが、このときに冬虫夏草属の真菌に感染すると、幼虫の体内で菌がゆっくり生長する。幼虫は約4年で成虫となるが、幼虫の中で徐々に増えた菌は、春になると幼虫の養分を利用して菌糸が成長を始め、夏に地面から生える。地中部は幼虫の外観を保っており「冬虫夏草」の姿となる。
中国では冬虫夏草の子実体を菌核化した宿主をつけたまま採集して乾燥し、漢方の生薬もしくは中華料理の薬膳食材として珍重してきた。

冬虫夏草の品質のグレードにも因りますが、一例ではありますが2006年当時、卸の取引価格が1グラム218元(1元=15円前後)で、1グラム190元の金よりも高いケースで取引されたケースもあり、消費者が手に入れる場合は、その何倍もの費用を支払ったことでしょう。
現在生薬市場での冬虫夏草の相場は、産地にも因りますが、平均すると1Kgが5万元前後の様です。価格は1グラム50元程度に落ちていますが、これは冬虫夏草の事件が、色濃く反映され価格が下落したものと思われます。しかしそれでもこの価格は問屋間の卸値なので、消費者が購入する時点では、金価格かそれ以上の価格での購入になるかと思われます。

中国のデパートや漢方薬局には、見た目の悪さからは想像できない程の価格、5万元や10万元という高価な定価が付けられ、桐の箱や高級感を醸し出すような箱に入れられ販売されています。(お客も値段が、高ければ高いほど、薬膳としての効果があると考えるのでしょう。)
卸の取引での冬虫夏草の価格は、産地と重さに拠るようですが、この重さが曲者なのです。
取引業者か生産者かが重さを増やす為に、重金属の粉を天ぷらの衣の様に付加して、流通ルートに乗せたようです。
重金属の中には、鉛、カドミウム、水銀、ヒ素等の様に、明らかに人体に害を及ぼすものも多く、これらの金属が重量を増すために使用されていたことがニュースとなり、大騒ぎになりました。黄色を付加するとなると、以前日本でも問題となった「イタイイタイ病」の原因となったカドミウム付加の可能性も大きいと思われます。

■ヒスイの製品
中国では、ペンダント、腕輪、美術工芸品、数珠などの多くのヒスイ(翡翠)の加工品が売られています。特に、ヒスイの腕輪をした女性を良く見かけます。

ある時、旅行ガイドをしている中国人の男性と雑談をしていてヒスイが話題になりました。
その時彼は自分の経験を基に、『九十九(つくも)さん、ヒスイの選別は本当に難しい。        デパートの売り場の製品だって、価格に見合わない価値が低いヒスイが結構販売されている。
中国人の私だって、過去に騙されたことがある。
九十九さんは、聞きかじりの知識程度で、ヒスイを買っては絶対いけない。安物を買うのだったら別だけど、必ず騙される。』と教えてくれました。
彼が、実際に騙されたケースや偽物の有り様を話して呉れました。しかし残念ですが、今は殆ど忘れてしまいました。
ただ美術工芸品の製作途中で飛散し粉となったものをかき集め再び固めて腕輪にしたもの、樹脂に緑のヒスイの粉や破片を入れたものが実際に販売されていることなどを聞くと、偽物や安物を高級品に見せる巧妙さには、本当に驚かされます。

■金の置物
桂林のデパートや成都のデパート、金の装飾品店で、黄金の豚や黄金の虎・牛等の置物をよく目にしました。およそ一辺が20~30Cmのガラスケースの中に入っているため、直接手で触ることは出来ませんが、ただ単に金の彫刻というのではなく、金の置物に更に金粉を振りかけた様で、きめ細かさに溢れており、本当に綺麗です。
付けられた値札も、1個10万元、20万元の物もザラです。
しかしこれも私の友人に言わせると、(下地となる部分は金属や木等いろいろある様ですが)、最終的にコンプレッサーで、純金の金粉をスプレーして完成するとのこと。
私が想うに、置物が大きくなると、手に持った時のドッシリ感を出す為、下地の素材を木ではなく、鉛などの重いものに変えている可能性も否定できません。
もしお客が、全て純金製と勘違いして購入した後で純金では無いと分かり、このことを店に抗議しても、店側が『金そのものを販売した訳でない。店は芸術品として販売したまでだ。』と言えばそれまでで、返品は拒否されるでしょう。

■スコッチウイスキーやワイン

桂林にも洋酒専門店があり、ワインや外国産のウイスキーが沢山置かれています。
店内の雰囲気も、いかにも外国の高級品のしか置いていない様な雰囲気を醸し出しています。

また上海プートン国際空港の免税店にも、写真のような高級スコッチウイスキー『ロイヤルサルート〇〇年物』などが売られていますが、私の知人は、『価格の高い安いに関わらず、輸入の酒類は全て偽物』と断言します。

私には確証がありませんが、一度知人がワイン店の開店披露パーティに連れて行ってくれて
何種類かのワインを飲んだ時、素人の私でも、のどの通りが良くなかったので、それから外国産のワインも中国産のワインも飲まないことにしています。
むしろ中国で従来から広く売られている名のあるお酒の方が、信用できると思われます。

■壊(こわ)れ物注意
これは、私が桂林にいる時、隠し撮りされた動画がネットで公開され、大きな問題になりました。
荷物の仕分け作業をしていた運送会社の従業員2~3人が、トラックから荷物を降ろしていた場面でしたが、一つの荷物を何回もトラックから投げ降ろす作業を、繰り返していました。
そして、3 , 4回繰り返したのち、本来仕分けする場所へ荷物を移していました。
何をやっていたかというと、『易碎(壊れ物注意)』と書かれた荷物を投げ降ろし、この作業を割れた音が確認出来るまで、何回もやっていた訳です。
この動画が公になり、当然従業員たちは、運送会社を首になりました。

なぜこの様なことをやったか、その理由は、欲しい物が十分に買えない、また贈物を貰うことが全く無い、その様な自分達の境遇がある一方で、他方では使い切れない程の沢山の贈物を手にする人達がいると言う、社会の格差に対する不満が原因だった様です。

序(つい)でながら、運送会社は割れた荷物の弁済はしてくれません。
保険を掛けるという方法もありますが、国が広く複数の運送会社が関与すると予想されるので、実際問題として、保険での救済も疑問に思われます。

 

■漢方薬
ずいぶん昔の事ですが、NHKの取材班が、チベット地方だったと思いますが、自然に生えている漢方薬を探して廻る中国人のドキュメンタリー番組がありました。
霧が深くまた寒々とした高山で、ゴツゴツした大きな石ばかりが目立つ山を登っていた主人公の中国人は、運よく高さが2~3メートルの大黄(だいおう)を1本見つけ、『これで何もしないで、数年間は生活出来る。』と喜んでいました。                    彼の話では、『大黄は漢方薬の王様で、どの病気にも効く。信じられない程の高値で売れる。』と言う事でした。
私にはこの番組が頭にあり、市販の漢方薬も値段も高いため、こうして野山を歩き回って、 漢方薬の材料が集められるのだと思っていました。
ところが、私が桂林にいる時、日本の税関でだったと思いますが、中国から輸入された漢方薬の材料が焼却処分されたというニュースを、ネットで知りました。

たまたま中国で働く津村順天堂の社員の人と話す機会がありましたので、この事を伺ったところ、現在の中国では需要に合わせるため、その殆どが、農家が漢方薬専用に畑で栽培しているということを知りました。
漢方薬の材料になる植物と言っても、成長の過程で、虫がついたり病気になったりするため、これを防ぐため、殆どの農家が農薬を散布したり、肥料をやるとのことでした。
但し、農家の知識も不十分で、出来るだけ農薬を多くやった方が良いと思っているらしく、過度に散布した結果、日本の税関での焼却処分になったと言う事でした。

彼の会社も、過去に残留薬物で全て輸入したものを廃棄したこともあったので、今は中国国内に事務所を置き、残留農薬の検査設備で社員が直接検査して、問題ない物だけを輸入するという方法を採っているとのことでした。(この話は、別段トリッキーな話ではありませんが、思い出したので書き加えました。)

■リョウさんが買った乗用車

どうしても欲しかったらしく、リョウさんが、成都で車を買いました。          私も車の購入に付き合いましたが、私と一緒の時には、買いませんでした。

(以前このブログの他の箇所でも書きましたが、中国には、100社もの車の完成品メーカーがあります。日本では、トラックメーカーを加えても10社もないのに、なぜこんなに多いかと言うと、要するに、内外の自動車部品メーカーから車のパーッを買い集め、組み立てることに特化しているからだと思われます。そうすることで、余分なコスト削減も、排ガス規制を始めとする今後のいろんな対応も可能になります。)

結局彼は、中国の国産車で、トヨタのクラウンに似た大型の乗用車をローンで購入しました。うる覚えですが、購入価格は、中国で販売されている日本製の同タイプの乗用車の半分以下だったと思います。試乗して乗り心地が良かった点、大型で見栄えが良いこと(これは中国人にとってプライドを保つ上で非常に大事なこと。                      周囲から金持ちと思われたい、周囲よりワンランク上と評価されたいと言う願いが凝縮されている。)、値段が国産車で安かったことが、選択の理由になりました。           しかし買って、半年ぐらいから、ドアガラスの自動昇降が上手く行かないなど、幾つも問題が発生した様でした。

彼の話では、車のボンネットを開けると、エンジンは三菱製だったが、急坂を登る場合、アクセルを入れても思ったほどスビートが出ない。                     本来はそれ相応のエンジンを積載しないといけないのに、メーカーがコスト削減のため軽自動車用か小型乗用車用のエンジンをこの車に積載した結果だと思うと、言っていました。(この話を彼から聞いた時は、笑いをこらえるのに苦労しました。)

恐らくカタログの排気量などもいい加減ではないかと思いますが、この様な信頼性に劣るメーカーが次第に淘汰されて行く中で、政府がメーカー同士の統合を図ったり、外国メーカーの技術導入の促進や韓国やヨーロッパの自動車メーカー買収等を通じて、いずれ近い将来、世界に打って出る乗用車メーカーも出てくる事でしょう。

参考迄に、中国人の車の買い方で、私が聞いた話を書きます。              しかしお金を持った人の中には、値切ることをしない人もいるかと思いますので、そんなケースの場合は、当てはまらないかも知れません。

日本車は大抵、日本国内での売り方を踏襲し標準装備を付加した上で、定価を決めて販売します。中国人は、まず日本でも誰もがやる似たやり方で、定価の値引き交渉に力を注ぎます。 そして、売手と買手の一致点となる価格を見いだしてからが、彼らの本番の様です。    中国人は、値切ることに時間を惜しみません。                     標準品に入っているが、これは不要、これも不要、という具合に標準装備品を随時外して値引を要求していくため、販売する側も戸惑い、結果的に予定以上の値引きに応ぜざるを得ないこととなる様です。

中国メーカーは、その辺を心得ているためか、元々付加装備やサービス装備は少なく、最低限の装備で販売すると聞きました。                           ただ日本のメーカーも時間も経ち、販売の経験を積んで来ていることから、中国メーカーに似た販売方法を採っている会社も、増えていると思われます。

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