1人っ子政策の問題点

1人っ子政策は、今年2016年になって完全に廃止されたようですが、この件について書きたいと思います。

1人っ子政策と言っても、度重なる法の改正や省毎の運用の差に加え、また都市部と農村部の戸籍の扱いの違いも絡み、私も正確に論じることは出来ません。

しかし1人っ子政策が主として適用されたのは、主に都市部の様で、少数民族や肉体労働のため後継ぎを必要とする農村部では、1人っ子政策が外されました。

1人政策と言っても私の周囲には、罰金子(2人目以上を産んだ親が、罰金を払い戸籍上の届出を行う子)の若い女性もいました。それ以外に無戸籍子(1人っ子政策に違反し罰金を逃れるため、親が2人目以降の子供の出生を役所に届け出ない子や愛人の子)の存在もあります。   また農村部では、男の子が生まれるまでは、何人も産んで良いと言われています。     1国に於いて、これらの相反する制度が混在する現状を見るにつけ、私には、不自然で不平等な政策に思えました。

私が1人子政策で一番の問題だと感じたのは、医療費の負担の問題でした。        物価の水準からして、中国では、病院の入院費、手術代が非常に高いのです。       中国では、国の健康保険制度も不十分で、1回の手術でだけで何万元もお金がかかります。

それも例え危篤で救急車(日本と異なり、中国では有料)で搬送されたとしても、先に病院の会計にお金を払わないと、入院も手術もして貰えません。                 私の知人が病院に運ばれたときも、病人の家族や仲間が至急の治療を訴えるのに対し、入院のお金を支払うまで救急車内での待機を要求する病院側の冷淡な対応には、違和感を感じざるを得ません。

もし入院中にお金が底をつき、治療費を支払えない場合、病状の深刻さに関係なく、直ぐに病院から追い出されます。新聞やテレビ局等のマスコミも、これを当然のことと考えているのか、ニュースに取り上げられることは、全くありません。                                              病院の直ぐ外で患者が死のうと、病院としては全く関係ないという態度で、患者が生き延びるための唯一の方法は、ともかくお金を支払うということに尽きます。                               ですから実際は病院に行けなく、自宅で死を待つ人も多いのではないかと思われます。

平均的な若夫婦2人の収入は月収が数千元(多くて4~5千元程度)ですので、1回の手術でも数万元が相場であることを考えると、月収の半年分かそれ以上を持っていかれることもザラです。ですから治療の為、親戚、友人や高利貸しから、お金をかき集める必要性も出て来ます。転移が多いガンなどにかかると、治療費負担に耐えかねて、手術を諦めるケースも多い様です。

1人っ子政策で生まれた若夫婦は、時間の差はあれ、両方の親4人の死ぬまでの治療費を負担することとなり、大半が貧乏にならざるを得ない非常に深刻な状況なのです。       軍の病院や国立の大学病院だから、入院費、治療費が特別に安いということは、全くありません。大半が国の収入となります。                           個人病院の場合は、大半が経営者の収入となっているのです。

日本での医師の平均年収は、大企業の社長並み(2000万円~2500万円)と言うデータを見たことがありますが、桂林では医師の給料が高いと言う話は殆ど聞こえて来ません。

ただ上海や北京などの病院の中には、海外留学した医者もいるでしょうから、この様にレベルの高い医者を揃えた病院は、それなりの給料を医師に支払っているのかも知れませんが、中国全体から見たら、医師の給料は決して高いとは言えない様です。

医療においても、国や一部の病院経営者は、庶民から苛酷にお金を吸い上げる一方で、庶民は益々貧困化していく現実を無くすためにも、また今後寿命の延びと共に予想される老人介護の問題の解決のためにも、1人っ子政策の廃止は妥当だったのかも知れません。

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