私達3人が成都を発つ時、成都では、雪はありませんでした。
成都より西側にある景徳鎮ならもっと暖かいと思いましたが、行って見ると数日前に降った雪が残雪として10cm程残っており、また風も肌を刺すような寒さでした。
地図で見ると、江西省の景徳鎮(けいとくちん;ジンダーゼン)から浙江省義烏(イウ)迄は、直線距離で400km程度(東京から大阪迄の直線距離に相当)だと思われますが、バスで行くことにしました。雪の残雪もあり、平均時速50Kmとしても、道も曲がりくねっている事を考えると片道9時間前後の行程だったと思います。
寒いこともあり朝の起床も遅れた上、ホテルの近くの陶磁器店で小さな陶板を何枚か購入したり、昼食をとったりで、バスセンターに着いたのは午後1時過ぎだったと思います。
バスセンターで切符を買おうとしたところ、同じ行先でも、2つの料金が有ることに気が付き、どちらの料金を支払ったら良いのか困ってしまいました。 4列表示の一番左が行き先、その右側が高い料金、更に右も料金、一番右が出発時間でした。李さんも、リヨウさんも、なぜ2つの料金が書かれているのか分からない為、 ガラス窓越しに切符の販売員に聞いたところ、左側の数字は、上限の運賃、その右側は本日の運賃という事でした。
李さんやリョウさんの意見では、正月や国慶節等で働きに出ていた人が一斉に帰郷する際、バス会社が勝手に値を釣り上げていたことがあったらしく、これをストップさせる為に、(地方)政府が上限を定めたらしい。 だから正月や国慶節等の時は、上限の運賃が採用される事になるらしい。
本日の運賃というのも微妙で、毎日株価見たいに変動するのか気になりましたが、そこは聞かなかったため料金体系は不明ですが、ガソリンの高騰等を理由に時々変えているのかも知れません。
義烏までの運賃が幾らだったかは、私は実際にお金の管理をしていなかったため、飛行機代を含め全く知らなく、また特に関心もありませんでした。
切符を買った後、時間があるため周辺を3人でブラブラしていた処、マイクロバスの運転手から声が掛かりました。『あんた達は、これから何処へ行くのかい。』と聞かれ、『これから義烏に行く予定で、出発時間を待っている所だ。』と李さんが言いました。 『それなら、このバスに乗ると良い。義烏の先の温州市迄行くから。運賃も安いし、バスセンターのバスより早く、今出発するとこだ。』と言いました。
李さんは即座に、『切符を買ったので、バスセンターのバスで行く。』と断りましたので、マイクロバスは、直ぐに私達から離れて行きました。
李さんは、私たちに、『他に誰も乗客が乗っていなかっただろう。あんなバスに乗ったらロクなことは無い。追剥(おいはぎ)の村に、連れて行かれるかも知れない。』と言いました。
私は、江戸時代の弥次喜多道中の世界ではあるまいし、21世紀の中国で、村人が追剥で生計を立てている村があるなんて、ビックリしてしまいました。
ともかく蟻地獄みたいな罠に嵌(はま)らなく、良かったと思いました。 もし現地の事に疎(うと)い私とリョウさんと2人だけで、また余りに出発迄の待ち時間が長ければ、ひょっとしたらマイクロバスの運転手の話に乗った可能性もあったかも知れないと思うと、ゾッとしました。
バスに乗ったのは午後3時頃ではなかったかと思います。
バスは一応長距離バスの仕様でしたが、座席も化繊のシートが傷んだもの、肘掛が壊れたもの、カーテンの開閉が覚束(おぼつか)ないものもあり、日本では廃車同然の車体でした。
景徳鎮が出発駅のワンマンバスでしたが、乗客は10数名で、結構空き席が目立ちました。自席の前の小さな網の中には、パンフレットなどは無く、乗り物酔い用と思われる折り畳んだビニール袋が、どの席にも入っていました。
景徳鎮を出発してぼんやりしていましたが、何時の間にか一寸(ちょっと)眠ったのかも知れません。気が付いたら、周りはまっ暗になっていました。 バスの中も真っ暗だし、暖房も入っていません。バスの進行方向の右も左も、真っ暗で何も見えません。
夜なので窓からの景色は分かりませんが、光が見えない為、周囲に家が無いことは間違いありません。前を見ると、ライトが前面を照らしていますが、バスの左右は、雪が10cm程度積もっていて、ライトでその白さが際立っています。
寒さもありトイレに行きたいと思いましたが、乗り降りの為の停車はするものの、中々一時休憩とはなりません。 景徳鎮を出てから、既に2時間経っています。私も段々落ち着かなくなり、トイレを我慢する辛さを味合わさせられました。
バスの揺れが少ないから、ビニール袋を使えというのか ? 席の空きも多いし、暗いから他の人には分からないかも、知れないけど・・・。女性の場合はもっと困るだろうし ? なんて変な事ばかり、頭に浮かんできます。
更に我慢する事1時間で、やっと一時休憩の小さな店の前に着きました。 白い息を弾ませながら、店の中に入り、急いで私達もトイレを済ませました。 そして他の人々と同様に、簡単な食事を取りました。 店の中で暖を取れた事とトイレを済ませた事で、やれやれという感じでした。
その後3回ほどトイレの休憩が入りましたが、最初だけは間隔が長すぎただけに苦痛でした。 時間的にも夜12時を過ぎて、そろそろ義烏市(浙江省金華市の中の県級市)に着くと思った頃、暗い夜道が、突如としてラスベガスに来た様な雰囲気になりました。 周りは、ホテルの案内・宣伝、飲食店の宣伝とか、展示場の宣伝のネオンサインでランランと輝いています。右も左もネオンサインばかりで、昼と勘違いする程の明るさです。
温暖化防止の為のCO2削減なんて、何処吹く風と言った感じです。
義烏市に入ったら、李さんの指示に従い、あるバス停で降り、そこからタクシーを拾い、タクシーの奨めるビジネスホテルで宿泊する事になりました。 義烏では、3泊することになりました。
義烏をウィッキペディアから抜粋すると、
商品卸売市場[編集]
2002年に開業した義烏国際商貿城(福田市場)、中国小商品城、賓王市場の三つの大規模日用品の卸売市場が立地しており、中国東部最大の物流基地である。 世界中のバイヤーも多く訪れ、日本の100円ショップ等の商品のうち、中国産のものは多くがここを通過している。
義烏国際商貿城一区:2002年開業、床面積34万平方メートル、店舗は1万店余。
義烏国際商貿城二区:2004年開業、床面積60万平方メートル、店舗は1万店余。
義烏国際商貿城三区:床面積46万平方メートル。
義烏国際商貿城四区:2008年開業、床面積108万平方メートル、店舗は2万店弱。
義烏国際商貿城五区:床面積64万平方メートル、店舗は7000店余。
中国小商品城・篁園服装市場(六区):2011年開業、床面積42万平方メートル、ファッションアパレル専門。
賓王市場:床面積32万平方メートル、加工食料品他を扱う。
私が、ここに行った当時は、四区までしか出来ていませんでしたが、合計すると店舗数だけで4万店になります。(三区の店舗数が書かれていない為、実数はもっと多い。)
仮にこの4万店を1店当たり5分見るとして、1日の開店時間を仮に10時~17時迄の7時間見るとすると、 40000店✕5分=200,000分
200,000分÷60分=3333時間
3333時間÷7時間=476日
驚くことに、全て店を見るのに1年4ヶ月程かかると言う結果ですが、この中には建物や各階の移動時間は入っていませんし、とても体力が持たないと言うのが現実でしょう。私達も、2日間店を見て回っただけで、足が棒になりました。
祝儀袋、クリスマスツリー、鋏、バッグ等ありとあらゆるものが、販売されています。日常的に使用する工業製品は全てあると言って良いでしょう。 個人客として購入も可能ですが、最低購入ロットが品物毎に決められており、 やはりビジネスとしての仕入がメインとなります。
各建物とも、各階ごとに東西南北に複数のメイン通路があり、メイン通路で区画割りされた中に、更に細かな区画で入店している状況です。 各階は、エレベーターとエスカレーターで繋がれていますが、ともかく歩き疲れました。
仕入のバイヤーは、アフリカ、東南アジア、ヨーロッパ等世界中から来ています。私達もそうですが、最初に来た人は、一体どこに行ったら欲しいものが探せるのか迷ってしまいます。
そこで、パンフレットの2%コミッションが意味を為します。
パンフレットに書かれた電話番号の会社に連絡すると、通訳が来て希望する商品を販売する所へ案内すると同時に、商談の通訳をやってくれます。(通訳は英語、スペイン語、ロシア語、フランス語等だけではなく、世界の多くの言葉に対応可能な様、人材を確保しています。例えばアフリカなどからは中国への留学生も多いため、留学生がスワヒリ語などの通訳をしているものと思われます。)
客を案内し、商談の通訳をし、成約すると取引額の2%をバイヤーが払うシステムですが、私が考えるに2%は余りに安い感じがします。 また商談が破談する可能性も結構あります。 ですから、お客を店に案内した時点で、成約の有無に関わらず、店からも人数を基にした一定額を受領(商談不成立時)また商談が成立したら取引額の3%とかのコミッションを貰っているものと思われます。
私達が日本に居るだけでは全く気が付かないし、知り得ない事ですが、これ程多くの国から、商品を買い求め義烏に押し寄せている現況を見るにつけ、中国の世界相手のビジネスに対する影響力を、目の当りにした感じがします。
写真から分かりますように、延々と続くショールームスペースには、健康器具、外科手術台、院内搬送車、介護機器まで、ありとあらゆる製品が置かれており、卸値で販売されています。ただ私たちは、こちらは見ていません。
義烏の現況については、http://aio-inc.com/yiwu/を読んでみてください。
出発前に、社長から義烏へは是非行くようにと話がありましたが、ただ私が求める観光客向けの商品は全く見当たらなく、殆どか日常品や雑貨類ばかりで、期待は大きく裏切られました。
次は、飛行機で、広東省の広州に向かうことにしました。