波望(はぼう)するは

波望するは、青春の彼方に見るもの。
そしてうらぶれて口ずさむもの。

偉大な自然に驚きたい。
偉大な自然に発見したい、自己の存在価値を。
この全身の鮮血が、露の一(ひと)滴(しずく)でも良いから、
人の心を驚かせたい。
ダイヤモンドより、美しいものを見たと、

八十島君よ !
君の言う通り、フルートでは意思は現せないだろう。
しかし
しかしだよ。
本当にゲバ棒でも意思は現せただろうか ?
君が振るったゲバ棒は、他人を傷つけ、
また自分をも傷つけたのではないのか ?

ざわめきの後に、
君は死という静を選んだ。
僕は敢えて意味を問わない。
むしろ僕は、君の生き方を羨ましく思う。
本当に八十島は生きていたと感じる。
生きた人間が活きて来たと感じる。
清流に洗われた澄んだ瞳、
一途な心。
君の様な純粋な人間は、生きて行けない世の中かも知れない。
たえず揺らぐ幻像を求め、
熱中するのでないと・・・・・・。

波望するは、青春の彼方に見るもの。
そしてうらぶれて口ずさむもの。

(昭和45年/1970年)

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