技術流出(3)   

2017年4月今回上海モーターショーの取材記事《佐藤耕一》より、

地元中国メーカーのデザイン力が飛躍的に向上していることは認めざるを得ない。だが依然として、中国には無数の自動車メーカーがあり、中には他社の人気車種と似ている、というか完全コピーしているクルマも、いくつか見受けられる。

なかでも、そのコピー技術の高さを感じるのが「ZOTYE」というメーカーだ。写真を見てほしい。これを見て、ポルシェ『マカン』ではないことを見抜ける読者はいったいどれくらいいるだろうか。それほど完成度が高いのだ。

個人レベルやバックヤードビルダーが作る、いわゆるレプリカ車は、どこかプロポーションがおかしかったり、チリがあっていなかったり、そこはかとなく”まがいもの”オーラが漂うものだが、このZOTYE『SR9』について言えば、そういった品質の低さは感じられない。完成度が違うのだ。

そしてこの「マカンもどき」だけでなく、同社のブースには、ジャガー『F-PACE』もどき、アウディ『Q3』もどきなど、いずれも完成度の高い車両を展示しており、その技術力に感心せざるを得ないのだ。

私が中国でビジネスをしていた頃、3年以上前になりますが、当時中国の完成車を販売する自動車メーカーは、100社以上と言われました。                     海外企業との合弁会社を設立出来なかった会社の中には、内外から車のパーツを買い集め、完成車として組み立て販売していた会社も多かったのではないかと思われます。

その中でも政府主導の形で、海外の一流メーカーに対して、核となる中国企業との合弁会社の工場を中国国内に作ることを条件に、中国での販売を許可いたしました。合弁企業の株式は、海外メーカーは50%以下の株式しか所有できないため、主導権はどの会社も中国側に握られています。

海外メーカーは、中国国内での販売は、海外からの輸入車も含め認められているものの、結果的には合弁企業を造ることで、製造のノーハウ、特許技術、最新の開発情報が、中国のメーカーに垂れ流しになりました。

しかし今日において、中国企業が海外との合弁会社を通じ技術を吸収する段階は終わったと、中国政府は判断しつつあり、最近は合弁会社どおしの合併を積極的に進めています。これは、例えば、ドイツのフォルクスワーゲンとの合弁会社が、アメリカのフォードとの合弁会社とを合併させる様なことで、海外の一流メーカー2つの技術情報を基に、更に良い車を作る上での基盤になります。

国際競争力を確保するためには是非必要だと政府が考えたら、3社の海外との合弁企業を一度に合併させる可能性もあります。

海外の企業が、中国政府の意向に反対し、合弁会社の合併に反対したとしても、出資していた中国の親会社自体もが既にかなりの技術力を有しているため、合弁会社を解体し、単独で合併し新会社を造ることも考えられます。

スウェーデン発祥のボルボは、既に中国自動車メーカーの子会社になっていますし、株式の取得による子会社化では、私が知らないケースも多々あると思われます。

韓国は北朝鮮との軍事衝突に対処するため、韓国内の米軍基地にサードを配備することになりました。これに中国側が反発する形で、ロッテや現代自動車等の主要な中国進出メーカーに対する締め付けを実施している事実は、多くの方々がニュースを通してご存知だと思います。

  https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170830-00028324-hankyoreh-kr&pos=2

http://japan.hani.co.kr/arti/economy/27815.html

私は、フォルクスワーゲンやトヨタ自動車を追撃するため、中国政府がこの機会を利用して現代自動車の体力をそぎ落とし、後日、現代自動車の株を安く買収する。          その後中国のメーカーと合体させ、世界市場に打って出る戦略も描いているのではないかと思っています。上手く行くかどうかは、不明ですが・・・・・・。

この様に政府主導で会社の合併や海外メーカーの買収を繰り返し、技術の集約と生産力のアップを図ることで、中国国内の乗用車のメーカーは、何れは10社程度に絞られて行くのではないかと考えます。                                   またその頃には、大半の合弁企業に出資した海外企業自体が中国から退去せざるを得ない事態に追い込まれるのではないかと思われます。

今年の東京モーターショウでは、海外の一流メーカーからの出展が非常に少なく、閑散としたものだったとニュースで報道されていました。                     一方北京や上海のモーターショウは、肌の露出度の高いコンパニオン達がマスコミを賑わせていますが、年々益々盛況になって行く様です。                     日本と中国で購買力の差が益々拡大していく状況では、モーターショウに投下する資金のコストパフォーマンスを考えると、仕方が無い流れかも知れません。

私が悲観的に見ているのかも知れませんが、恐らく今後10年以内に早ければ5年程度で、中国メーカーは独自で開発した競争力のある新車を登場させて、世界での新車販売量を競っているトヨタやフォルクスワーゲン等の牙城を崩し始めるのではないかと思います。

実は、2018年5月14日の記事ですが、ヤフーで次の様な記事を目にしました。https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180514-00010000-autoconen-bus_all

まるで水が高い所から低い所に流れる様に流れ、世界の先端自動車メーカーが持つ最新の技術が、中国メーカーにまるで砂漠の砂に吸われるように、吸収されています。        勤務先のメーカーが、途中或いは定年退職した日欧のエンジニアに対して、退職後の機密保持を課したとしても、国内法が及ばない中国で就職の為、効果は非常に限定的と思われます。 やがてスマホのシェアーの変化と同じ様に、中国国内での生産シェアーが一番のメーカーが、世界一の自動車メーカーとなり、日欧のコストが高い自動車メーカーのシェアーが見る見る間に無くなっていくのではないかと危惧致します。                    また高給での優秀な人材の引き抜き、新卒採用で、将来の技術競争にも遅れを取る可能性は否定できません。残念ながら、現状技術の流出について、歯止めとなる効果的な処置は、無いようです。

アメリカがTPPより抜け腰砕け感があるものの、自由貿易を標榜し、中国の様なアンフェアーな貿易取引やビジネス環境を持つ国を排除する経済ブロックの形成は、中国の軍事予算を削減させアジアにおける軍事的な脅威を減らす意味においても、非常に重要だと考えます。ただ近視眼的なビジネスマンのトランプ大統領にその力量があるのかというと ? であり、早く次の大統領の出現に期待するしか無いのかも分かりません。

https://newsphere.jp/economy/20171213-3/

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